1-2. ジョン・ハラス,ロジャー・マンベル『アニメーション 理論・実際・応用』(伊藤逸平訳、東京中日新聞出版局、1963年/復刊:ダヴィッド社、1974年/原著:Roger Manvell, John Halas, Technique of Film Animation, Focal Press, 1959)
専門書の少ない時代に初学者がまず手にした。原題に「Technique of」とあるように制作技術や形式・技法の解説に重点を置くが、アニメーションの本質を論じ、特に技術や形式の側から考える際は示唆に富む。
2-1. 森卓也『アニメーション入門』(美術出版社、1966年)
アニメーションの世界を俯瞰するものとして期を画する書の一つ。系譜(通史)の記述が中心となるが、前章に定義と分類等を配し類書の定形を成している。世界に眼を広げる際の一種の“海図”としての役割を果たした。
2-2. 山口且訓、渡辺泰『日本アニメーション映画史』(プラネット編、有文社、1978年)
戦前編/山口、戦後編/渡辺に続く資料編は詳細な記述で高い資料性に定評を得た。「映画史」故か重要度を増していたテレビアニメーション面は手厚くないが、日本アニメーション史研究の上で、外せぬ基本文献の筆頭。
2+x 『FILM 1/24』(アニドウ、1976年5月[新版第8号]〜1984年7月[新版第32号])
3-1. シェルドン・レナン『アンダーグラウンド映画』(波多野哲朗訳、三一書房、1969年/原著:An Introduction to The American Underground Film, Dutton, 1967)
映画との関係性や短編作品、作家性、商業—非商業の問題など、実験映画にも視野を広げる必要があるが、これは初の本格的な実験映画の書。理論面での弱さはあるが資料性に富み、アニメーションの概念規定にも示唆的。
3-2. Robert Russett, Cecile Starr, Experimental Animation: an Illustrated Anthology (Van Nostrand Reinhold, 1976 / Reprint edition: Experimental Animation: Origins of a New Art, Da Capo Press, 1988)
実験アニメーションに関する専門書として最重要なものの一つ。アニメーションの概念の検証や拡張にも、また芸術性と商業性、個人性と集団性、作家や作品を考える上でも、実験アニメーションは重要な研究課題となる。
4-1. G. サドゥール『世界映画史』(丸尾定訳、みすず書房、1964年;『世界映画史1』、1980年)/旧訳版:岡田真吉訳、白水社、1952年/原著:Histoire du cinéma mondial, des origines à nos jours 9e éd., Flammarion, 1972
アニメーションが“アニメーション映画”だった時代、映画は特に参照され意識する必要があった。広く世界的な視野で映画史を一巻で扱う書として定評がある。極僅かなアニメーション映画に対する記述にも含蓄がある。
4-2. 伴野孝司、望月信夫『世界アニメーション映画史』(森卓也監修、並木孝編、ぱるぷ、1986年)
②の系譜にも連なる文献だが、日本人の著者による世界アニメーション史の労作。邦語文献としては質・量共に高い水準にある。これらが示したアニメーション史観は一つの基準である一方、批判的に新たな研究を育んだ。
5-1. 浅沼圭司『映画学 その基本的問題点』(紀伊國屋新書A-17、1965年/復刊:紀伊国屋書店、1981年;精選復刻紀伊国屋新書、1994年)
日本を代表する映画学者が映画学の本質を明らかにすべく映画史や映像の基本問題から考察。映画学を出発点としたアニメーション研究にとっても基本的問題が提示され、アニメーション学の構想に対しても示唆を受ける。
5-2. 『新映画事典』(浅沼圭司他編、美術出版社、1980年)
映画・映像学に基づくアニメーション研究には座右の書。特に浅沼圭司の論考の数々はアニメーション研究にとっても重要な問題を含み、映画の諸問題をアニメーションのそれに置き換えるだけでも数多の研究課題を生む。

古い著作で引用されることも多くはないが、日本のこの分野の研究では避けて通れないクラシックスと位置付けられる。何よりあの時代にアニメーションの本質や可能性を真摯に論じたことに名状し難い深い感銘を覚える。